こんばんは.yonekenです.
KiCad本がめでたく発売され,これからKiCadを初めてみようかと思った方も多いと思います.その際,「最新版がどこにあるのかよくわからない」という質問をよく受けるので,ここでまとめておきます.
KiCadはOSS(オープンソース・ソフトウェア)なので,アプリケーションを作成するためのソースコードが全て公開されています.そのため,バラバラのバージョンのアプリケーションが色々なところで配布されていますが,基本的には,KiCadを開いたときにステータスバーに表示されるBZR○○○の○○○に入る数字が大きいほうが新しいものです.
・トラスペ No127(通称,KiCad本)のDVDに収録のもの:BZR4022-ja
最新安定版の,UIをkicad.jpで日本語化したものになります.Windows用のみ.こちらはkicad.jp管理グループが完全にコントロールしているため,できれば大多数のユーザーの皆さまにも,このバージョンを使っていただきたいところ..
・KiCad本家の最新版:BZR4022
KiCad本家がリリースしている最新の安定版になります.KiCadの日本語化作業が本家と非同期で行われているため,インタフェースがところどころ英語版のままになっています.Windows用とUbuntu用が配布されています.
・Linuxの各パッケージマネージャで配布されているもの:色々
aptやyum等,Linuxのそれぞれのパッケージマネージャで配布されているものです.日本語化はされていないため,自分で日本語ファイルを所定の位置に配置してください.パッケージのメンテナによっては,古いバージョンのまま放置されていることもあるようです.
・トランジスタ技術2013年5月号のDVDに収録のもの:BZR3256-ja
過去の安定版の,UIをkicad.jpで日本語化したものです.上のBZR4022版との主な違いは,PcbNewの基板データのファイルフォーマットが異なることと,配線禁止領域の設定がないことと,パッドの個別設定ができないことです.Windows用です.
以上がお勧めできるバージョンになります.これより下は,あまりお勧めできない・・,もし問題が起こっても,誰かに助けてもらえる可能性が非常に低いバージョンです.
・Mdx4というサイトで配布されているMac版:BZR4721
・quartzoというサイトで配布されているMac版:BZR4027
KiCad本家は,Mac用の安定版リリースをしていません.そのため,ここで配布されているのは,KiCadをサイト管理者が独自にビルドしたものです.Mac版はバグ修正が不十分なため,どこでエラーが出るか分かりません.Mdx4版はライブラリが別配布になっているので,忘れず導入してください.
・開発リポジトリを独自ビルド
現在,開発中のソースコードを自分でビルドしてしまう方法です.CERNによる押しのけ配線等の新機能を利用できるのは,今のところこの方法だけ(*)です.当然ながらバグの宝庫なので,問題が起こった場合は自分でC++のソースコードを読んで修正して本家にパッチを投げられるくらいの人でないと,基本的には厳しいです.
最近,Windowsユーザー向けには,kicad-winbuilderという,簡単に最新の開発版をビルドするツールが提供され始めました.また,Macユーザー向けに,Homebrew用のスクリプトを提供する試みもあります.しかし,バグの宝庫であることは変わらないので,注意して利用してください.
kicad.jp管理グループとしてお勧めなのは,断然,一番上のトラスペ版です!他のバージョンで問題が起こっても,正直,フォローはできかねる場合があります.
ただし私自身はMacユーザーなので,一番下の独自ビルドをする人が増えることをひそかに期待しています.一緒に血の涙を流しながらMac版のデバッグをしましょう(何
* : 押しのけ配線の機能が導入されたのは,BZR4863時点.
ピンバック: 全部無料!オープンソースのプリント基板CAD KiCadを導入 – bokuraku.com